世界の黎明をみる者におくる詩 山村暮鳥
Ⅷ
[やぶちゃん注:以上は扉(左)の左寄り位置に濃い橙色で印字。]
世界の黎明をみる者におくる詩
鷄の聲にめざめた君達だ
からすや雀より早くおきいで
そして畑へ飛びだした君達だ
朝露にびつしよりぬれた君達だ
まだ太陽も上らないのに
君達の額ははやくも汗ばんだ
君達はひろびろとした畑の上で
世界の黎明(よあけ)をみた
それをみるのは君達ばかりだ
此の世のはてからのぼつてくるその太陽を
どんなに君達はおどろかしたことか
君達はしるまい
君達はしるまい
此の若き農夫を思へ!
[やぶちゃん注:太字「からす」は原典では傍点「ヽ」。]