木犀 山村暮鳥
木犀
木犀の花のかをりに咽ぶ…
秋の日のうすらさみしい光を浴びつつ、
頻りに、死をねがふ
あたたかな午後の靈魂(たましひ)。
淚が胸の上にぽとりぽとりと、
いつのまにか、女は記憶にしのび込み、
その音を聞いてゐたつけが
もう、すやすやと眠つてゐる。
木犀の花が散つたら ‥
‥‥冬‥‥冬、冬‥‥
[やぶちゃん注:リーダは二本の初版本を確認した。第一連一行目(三点リーダ)及び最終連一行目(二点リーダ前の一字分空隙)のそれは、ほぼ百%、印刷で摺れなかったミスと考えてよいと思うが、再現しておいた。
「木犀の花が散つたら」白い花を咲かせる、シソ目モクセイ科オリーブ連モクセイ属モクセイ(ギンモクセイ) Osmanthus fragrans の開花期は九月から概ね十月一杯までである。]

