梟の歌 山村暮鳥
梟の歌
1
ものゆはぬ、人形
もの言はぬ、悲しみ
泥土(つち)を捏ね
おのれを作る
靈の人形つくり
[やぶちゃん注:「ゆはぬ」はママ。]
2
牛は野にねころび
かなしみの草を反嚼(にれが)む
[やぶちゃん注:「反嚼(にれが)む」漢字から推量出来るが、「にれがむ」は「にれかむ」(漢字表記「齝む」)で牛などが牧草を嚙んで一度飲み込んだ食物を再び口に戻して食む、反芻(はんすう)行動のことを指す動詞である。]
3
さわがしきなみをきらひ
やみのよのなぎさをのがれて
わたしのむねに
ねむるちどりよ
あいぢやくはうすらあかりさ
しののめのさみしさの
うみおとしたのはめなしご
そのめなしごを
だいてゆくなみのおもひ
4
消ゆるいのちを草の葉に
かへらぬ霜を手のひらに
冬がわたしの額にきた
――さらば、わが蟋蟀よ……
5
山葡萄、熟みて赤らみ
秋の日はおもひ沈めり
わが耳はゆめを孕めり
(記憶よ、ささやくなかれ)
6
(指をもて
のぞみを胸に描きぬ)
雲よ、かなしむなかれ
足音そろへてしなよく踊れ
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