遠いふるさと 山村暮鳥
遠いふるさと
遠いふるさとの
その初冬をおもひだして
自分は郊外にきてみた
父のふるさとがどちらにあるのか
そのゆくさきざきでうまれる子ども達は
その方角さへも知らないのだ
その子どもたちにも
そちらの雪の山々でもみせようと
郊外につれだつてきてみた
けれど もうとつぷりと
夕靄がたちこめてゐて
なんにもみえない
ひろびろとした麥畠にでて
自分達のみたのは
さびしい電線のはりがねと
曲りくねつた田舍道
そのうへをとほく
おもちやのやうな人力車が一つはしつてゆく
ただ、それだけ
そんなものをみにきたのではなかつた
だが、さうしたものでもみてゐると
はるかに
はるかに
その廣い郊外のはてに
山々を越えたあちらに
いまもむかしのやうに、はやくも
雪で純白(まつしろ)にうづもれてゐるであらう
自分のふるさとがあり
自分を手招いてゐるのであつた
[やぶちゃん注:彌生書房版全詩集では以下のように第二連と第三連が繋がっており、全体が四連構成となってしまっている。初版は左ページ内ではっきりと連が切れている。
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遠いふるさと
遠いふるさとの
その初冬をおもひだして
自分は郊外にきてみた
父のふるさとがどちらにあるのか
そのゆくさきざきでうまれる子ども達は
その方角さへも知らないのだ
その子どもたちにも
そちらの雪の山々でもみせようと
郊外につれだつてきてみた
けれど もうとつぷりと
夕靄がたちこめてゐて
なんにもみえない
ひろびろとした麥畠にでて
自分達のみたのは
さびしい電線のはりがねと
曲りくねつた田舍道
そのうへをとほく
おもちやのやうな人力車が一つはしつてゆく
ただ、それだけ
そんなものをみにきたのではなかつた
だが、さうしたものでもみてゐると
はるかに
はるかに
その廣い郊外のはてに
山々を越えたあちらに
いまもむかしのやうに、はやくも
雪で純白(まつしろ)にうづもれてゐるであらう
自分のふるさとがあり
自分を手招いてゐるのであつた
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