騷擾 山村暮鳥
騷擾
その曲線を見よ、
あやしき光のだんすを……
しづかなる蠅のあとより陰影(かげ)は
ものの匂ひを嗅ぎ廻る。
黃(きいろ)に惱むSYMPHONIE.
床の上なるなつかしさを
とりかこむ氣壓よ、
何事もなし、
驗溫器に眠る水銀。
[やぶちゃん注:太字「だんす」は原典では傍点「ヽ」。「廻る」の「廻」は原典の用字。
「SYMPHONIE」フランス語の「交響曲(シンフォニー:英語:symphony)」。敢えて音写するなら「サンフォニ」(ドイツ語でもこう綴り、「ジュンフォニー」と読むが、ここまで現存する詩群では暮鳥はドイツ語で表記したことはない)。]