小曲 山村暮鳥
小曲
雪は直線
くらりおん
瞳(め)のしぐなるに
天の雪
をんなゆゑ
ゆだの首縊り
[やぶちゃん注:太字「しぐなる」「ゆだ」は底本では傍点「ヽ」。因みに、私はユダ支持者である。彼はイエスの生温い布教活動に業を煮やした過激な信仰者であった。イエスが許すべき対象は実は誰よりも彼を筆頭にすると私は考えている。多くの絵の題材となった〈放蕩息子の帰還〉は正にそれをシンボライズしていた。最新のそれはタルコフスキイの「惑星ソラリス」のエンディングであり、ドストエフスキイの父殺しをカラマーゾフ兄弟の代わりに敢然と遂行するスメルジャコフこそ彼であった。
「くらりおん」“clarion”。明瞭にして毅然としたラッパの響きの謂い。ラテン語の「透き通った」の意が原義。ここで「ヨハネの黙示録」を想起する私は牽強付会か。]