遙にこの大都會を感ずる 山村暮鳥
遙にこの大都會を感ずる
この麥畑の畦のほそみち
この細道に立つ自分をはるかに大都會も感ずるか
けふもけふとて
砂つぽこりの中で搖れてゐる草の葉つぱ
ああ大旋風も斯る草の葉つぱからはじまつてやつぱり此の道をはしるのだ
ああ此の道
道はすべて大都會に通ずる
道は蔓のやうなものでそして脈搏つてゐる
まつぴるまの太陽も暗く
あたまから朦朦と塵埃をあびせかけられてゐる幻想
その塵埃の底にあつて呼吸(いき)づく世界きつての大都會よ
ああ大沙漠の壯麗にあれ
ああ壯麗な大旋風
その街街の大建築の屋根から屋根をわたつて行く
大群集の吠えるやうな聲聲
此の大都會をしみじみと
此の大沙漠中につつ立つ林のやうな大煙筒を
此のしづけさにあつて感ずる
[やぶちゃん注:「大煙筒」そのまま読むなら「だいえんとう」。「煙筒」は煙突。しかし私は「だいえんとつ」と読みたい。暮鳥は好んで「煙突」を詠み込むが、私はそれらも総て「えんとつ」と読むことにしている。識者の御叱正を俟つ。]

