自分はさみしく考へてゐる 山村暮鳥
Ⅶ
[やぶちゃん注:以上は扉(左)の左寄り位置に濃い橙色で印字。]
自分はさみしく考へてゐる
ひとびとを喜ばすのは善いことである
自分をよろこばすのは更に善いことである
ひとびとをよろこばすことは
或は出來るかも知れぬ
自分をよろこばすことは大切であるが容易でない
物といふあらゆる物の正しさ
みなその位置を正しく占めてゐる秋の一日
すつきりと冴えた此の手よ
瘦せほそつた指指よ
こんなことを自分はひとり考へてゐる
なんといふさみしい自分の陰影(かげ)であらう

