聖母子像(聖母子圖) 山村暮鳥
聖母子像
日あたりで
うれしさうな
聖母(マドンナ)達
どつちの膝の上にも
すやすやと
ねむつてゐる
小さないきもの
どれもこれも
蟹のやうな
猿のやうな
そんな顏
よくもまあ
こんな不緻縹にうまれたもんだ
そこへ
とほりかかつた
これも聖母(マドンナ)
その脊の
銅羅のやうにわめく荷物を
おろしてやすむと
荷物は
すぐ木瘤のやうな
乳房にしがみついて
泣きやむ
三人は、それこそ
三羽の雀のやう
あかんぼたちは
母親そつくり、いきうつし
だがそれでいいのだ
それだからいいのだ
おう、聖母(マドンナ)よ
あかんぼたちよ
實にいい
[やぶちゃん注:彌生書房版全詩集では標題が「聖母子図」となっている(こちらの「研究余録~全集目次総覧~」の「山村暮鳥全集」全四巻(一九八九~一九九〇年筑摩書房刊)の目次でも「聖母子図」であるから、これで、
彌生書房版全詩集版は刊行詩集本に依拠していない
ことが明白となった)。彌生書房版では「泣きやむ」の後に空行はなく「三人は、それこそ」と続いていて、全連七連と以上より一連少ない。
「不緻縹」不器量(ぶきりょう)の当て字。但し、「不縹緻」の語順が普通のようである。
彌生書房版全詩集版。
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聖母子圖
日あたりで
うれしさうな
聖母(マドンナ)達
どつちの膝の上にも
すやすやと
ねむつてゐる
小さないきもの
どれもこれも
蟹のやうな
猿のやうな
そんな顏
よくもまあ
こんな不緻縹にうまれたもんだ
そこへ
とほりかかつた
これも聖母(マドンナ)
その脊の
銅羅のやうにわめく荷物を
おろしてやすむと
荷物は
すぐ木瘤のやうな
乳房にしがみついて
泣きやむ
三人は、それこそ
三羽の雀のやう
あかんぼたちは
母親そつくり、いきうつし
だがそれでいいのだ
それだからいいのだ
おう、聖母(マドンナ)よ
あかんぼたちよ
實にいい
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