郊外小景 山村暮鳥
郊外小景
とほくとほく
天(そら)のはてにみえる
山脈の
はつきりとした紫紺色
そのいただきは
まつ白だ
よくみると
その山かげからほそぼそと
一すぢのうすい煙が立つてゐる
おや、あんなところにも
自分達とおなじような
人間がすんでゐるのだらうか
それなら
あの煙のしたには
鷄もないてゐるだらう
子どももあそんでゐるだらう
なんだか
そこがたいへん
いい國のような氣がしてならない
この麥畑の徑を
まつすぐに
どこまでもどこまでも
いつてみたいような氣がしてならない
[やぶちゃん注:「自分達とおなじような」「いい國のような氣がしてならない」「いつてみたいような氣がしてならない」の三ヶ所の「ような」はママ。
「この麥畑の徑を」彌生書房版全詩集では「徑」が「逕」となっている。
彌生書房版全詩集版。
*
郊外小景
とほくとほく
天(そら)のはてにみえる
山脈の
はつきりとした紫紺色
そのいただきは
まつ白だ
よくみると
その山かげからほそぼそと
一すぢのうすい煙が立つてゐる
おや、あんなところにも
自分達とおなじやうな
人間がすんでゐるのだらうか
それなら
あの煙のしたには
鷄もないてゐるだらう
子どももあそんでゐるだらう
なんだか
そこがたいへん
いい國のやうな氣がしてならない
この麥畑の逕を
まつすぐに
どこまでもどこまでも
いつてみたいやうな氣がしてならない
*]
« 山村暮鳥詩集「土の精神」始動 / 縞鯛の唄(序詩)・永遠の子どもに就て | トップページ | 朝餉の食卓 山村暮鳥 »