春 山村暮鳥
春
と或る洋品店の
華かな飾窓のところに
うつくしい飾り人形がしよんぼりと立つてゐた
そのけばけばしさつたらなかつた
自分が俥の上からふりかへると
その人形がにつこりとした
二ど目にみたときには
もう、くるりとあちらをむいてゐた
自分は大口をあけてからからと笑ふこともできなかつた
それが、まあ、どうだい
動きだしたんだ
遠くからくる若い男をみつけて
その方へ
而も駈けださないばかりに
[やぶちゃん注:彌生書房版全詩集では「飾窓」に「シヨーウヰンドー」とルビが振られており、全く印象が異なる。
彌生書房版全詩集版。
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春
と或る洋品店の
華かな飾窓(シヨーウヰンドー)のところに
うつくしい飾り人形がしよんぼりと立つてゐた
そのけばけばしさつたらなかつた
自分が俥の上からふりかへると
その人形がにつこりとした
二ど目にみたときには
もう、くるりとあちらをむいてゐた
自分は大口をあけてからからと笑ふこともできなかつた
それが、まあ、どうだい
動きだしたんだ
遠くからくる若い男をみつけて
その方へ
而も駈けださないばかりに
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