蟋蟀其他 山村暮鳥
蟋蟀其他
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ほんにいとしや、
それやこれやも女ゆえ、
蟋蟀(こほろぎ)のかこちごと、
煩悶は玉の如し。
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蟋蟀は
金(きん)の小さき十字架を
肌に秘めて、なく、
ゆめよりも悲し。
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丘の上の
赤き旗は
君が髮の如く
明日(あした)を風に委(まか)す。
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われは唯、單純を愛す。
磯山の草は
黃(きいろ)の花をつけぬ、
死ぬべき身なり。
[やぶちゃん注:第一パートの二行目の「ゆえ」はママ。なお、総標題は彌生書房版全詩集では「蟋蟀」で字空けをし「其他」のポイントを落して附してある。原典はご覧の通り。]

