信樂 山村暮鳥
信樂
くれなやむ
冬のはじまり
空遠く
落葉さんらんたり……
その落葉を禮拜せよ
*
しんじつ
ひとすぢ
たちのぼる香爐のけむり
*
みよ
木はおのが影を曳く
*
いちりんの
くさばな盜めば
手ひかり
眞裸(まはだか)の
をんな一列
秋天
かなしみ
落葉す
*
一脈かすかに
水走り
いのれば
枯木さんらん
*
えんぴつのやうに
指指をけづれ
ああ、わが靈性の噴水
[やぶちゃん注:「信樂」は恐らく「しんげう(しんぎょう)」で、「教えを信じ喜ぶこと」「阿弥陀仏の本願を信じて疑わないこと」の意の仏教用語である。キリスト者であるからこそ、暮鳥は仏教も深く学んでいたようであり、その信仰の様態には、異教であっても深く共感する部分があったに違いないことは容易に推察出来る。]

