卓上 山村暮鳥
卓上
ひえびえとこつぷの陰影(かげ)、
薄荷草は
をんなの樣ないきづかひに
ひよろりと伸びる。
一ぱいの、七分は
夢の泡となり、
さみしさに曹達水(そうだすゐ)、
脆き生命(いのち)をひきくらべつ、
芬香(にほひ)はあたりに斑の如し。
[やぶちゃん注:太字「こつぷ」は底本では傍点「ヽ」。「曹達水(そうだすゐ)」のルビ「すゐ」はママ。
「薄荷草」「はつかさう(はっかそう)」は狭義の本邦在来種であるシソ目シソ科ハッカ属ハッカ変種ニホンハッカ Mentha canadensis var.
piperascens と採っておく。
「斑」「まだら」では韻律がひどく悪い。「ふ」と読んでおく。]
« 廢園辭 山村暮鳥 | トップページ | 賦 山村暮鳥 »