鴉祭の詩 山村暮鳥
鴉祭の詩
大鴉
藁とぼろとでこしらへた鴉
そのからすを祭れ
きみらは農夫
ひろい黎明(よあけ)の畠にとびだし
しみじみと種子(たね)を蒔いた
種子は一粒一粒
種子は善い種子
その上に土をかけ
太陽にそれをかくした
きみらは農夫
それからといふもの
どんなに畠のことばかりかんがへてゐたことか
そんなこととはしらないで
そんなことともしらないで
鴉めが來てはそれをほぢくる
そのからすを祭れ
[やぶちゃん注:太字「ぼろ」は原典では傍点「ヽ」。「ほぢくる」はママ(「穿(ほじ)くる」は歴史的仮名遣でも「ほじくる」でよい)。標題「鴉祭の詩」の「鴉祭」は「からすまつり」でこれは、穀物を食害する害鳥としてのカラスを忌避防除するそれではなく、平凡社の「世界大百科事典」によれば(コンマを読点に換えた)、『記紀では八咫烏(やたがらす)を天照大神の使者としているが、現在でもカラスを山の神や祖霊の使わしめと考えたり、ミサキ,ミサキ神などと称して神使としたりする神社は多い。名古屋の熱田神宮、近江の多賀大社、安芸の厳島神社などもカラスと関係が深く、カラスに神饌(しんせん)を供して年占をする烏祭、御鳥喰神事(おとぐいしんじ)が行われる』。普段の『日にはカラスを害鳥として憎みきらう農家でも、正月の鍬入れ、鋤初めの日には、烏勧請(からすかんじよう)などといって積極的にこの鳥を招き、投げた餅を食べるか否かで収穫の豊凶を占ったり、田の』三ヶ所に『置いた食物のいずれをついばむかによって、その年に早・中・晩稲のどれをまくかを決めたりするなど、カラスに神意を』伺ったとある、その下線(私が引いた)の行事を指すものであろう。]

