自分達の仕事 山村暮鳥
自分達の仕事
自分達の仕事
それは一つの巣をつくるやうなものだ
此の空中にたかく
どんな強風にも落ちないやうな巣をつくれ
そして大地にふかぶかと根ざした木木
その木の梢のてつぺんで
卵を孵へさうとしてゐる鳥は
いまああしてせわしく働いてゐる
每日每日
朝から夕まで
あちらの都會の街上で女の髮毛(かみげ)を拾つたり
こちらの村の百姓の藁を一本盜んだり
ああ自分達もあの鳥とおなじだ
けれど鳥にはあのやうな翼がある
自分達には何があるか
ああ
[やぶちゃん注:「せわしく」はママ。
「あちらの都會の街上で女の髮毛(かみげ)を拾つたり」果たして山村暮鳥がそれを意識しているかどうかは別として(私はそれを念頭に於いてそう言っていると思っている)、江戸時代には鬘や添え髪(かもじ)の材料とするために女の髪の毛を拾うことを生業(なりわい)とした者がいた。ジャンキー将軍のブログ「江戸散歩」の「『おちゃいな」の女性が町で拾っていたものは?』を参照されたい。髪結い床に正規に申し込んで買い取る者らも含め、古くは賤民視されていた可能性は高い(因みに、これは脱線であるが、かなり現代まで本邦では理髪店の髪を回収し、それで安価な醬油を作っていた事実がある。実際に昔、私が刈って貰っていた理容師は修行時代にそういう業者が出入りしていたと証言している。現代中国で同様に人の髪の毛で醬油を作っているのが摘発されたという記事を数年前に読んだが、私は別に驚きもしなかった)。]

