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2017/03/24

或る風景   山村暮鳥

 

  或る風景

 

みろ

大暴風の蹶ちらした世界を

此のさつぱりした慘酷(むごた)らしさを

骸骨のやうになつた木のてつぺんにとまつて

きりきり百舌鳥(もず)がさけんでゐる

けろりとした小春日和

けろりとはれた此の蒼空よ

此のひろびろとした蒼空をあふいで耻ぢろ

大暴風が汝等のあたまの上を過ぐる時

汝等は何をしてゐた

その大暴風が汝等に呼びさまさうとしたのは何か

汝等はしらない

汝等の中にふかく睡つてゐるものを

そして汝等はおそれおののき兩手で耳をおさへてゐた

なんといふみぐるしさだ

人間であることをわすれてあつたか

人間であるからに恥ぢよと

けろりとはれ

あたらしく痛痛しいほどさつぱりとした蒼空

その下で汝等はもうあらしも何も打ちわすれて

ごろごろと地上に落ちて轉つてゐる果實(きのみ)

泥だらけの靑い果實をひろつてゐる

おお此の蒼空!

 

[やぶちゃん注:太字「あらし」は原典では傍点「ヽ」。

 

「大暴風」「おほあらし」と訓じているものと私は思う。

「蹶ちらした」「けちらした」と訓じているものと思われるが、これは「蹶」の字の音「ケツ」からの当て訓のように思われる。「蹶」には「つまずく・失敗する・倒れる・ひっくり返る・殺す・根元から抜き取る・躍る・飛び上がる・走る・動かす」等の意はあるが、対象を「蹴散らす」の意はないからである。

「おお此の蒼空!」例外的に述べておくと、六年後にイデア書院から刊行された改版「風は草木にささやいた」ではこの一行が削除されている。私は改版を支持しない。

 

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