生物 山村暮鳥
生物
すべてのものは勞苦する――
女床屋の七面鳥(タアキイ)。
氣むづかしい都會の空氣が綺麗な鳥冠(とさか)で光つてゐる。
何か、危險な巧策(たくらみ)をして
私語(ささや)くのかと、
人さへ見ればすぐ妬む。
色好(いろず)きな七面鳥(タアキイ)、
芝居のやうな悲しい生活に、すべてのものは勞苦する。
そうして……
女床屋の七面鳥(タアキイ)。
それを凝(ぢつ)と眺めて笑ふ大輪の、赤い眠むさうな西洋の花。
[やぶちゃん注:第三連二行目の「そうして」はママ。
「妬む」私は「そねむ」と訓じたくなる。]