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2017/03/23

秋ぐち TO K.TŌYAMA.   山村暮鳥

 

   

 

[やぶちゃん注:以上は扉(左)の左寄り位置に濃い橙色で印字。]

 

 

 

  秋ぐち
    
TO K.TŌYAMA.

 

さみしい妻子をひきつれて

遙遙とともは此地を去る

渡り鳥よりいちはやく

そして何處(どこ)へ行かうとするのか

そのあしもとから曳くたよりない陰影(かげ)

そのかげを風に搖らすな

秋ぐちのうみぎしに

錨はあかく錆びてゐる

みあげるやうな崖の上には桔梗や山百合がさいてゐる

紺靑色の天(そら)よりわたしの手は冷い

 

友よ

おん身のまづしさは酷すぎる

而もおん身の落窪んだその目のおくに眞實は汚れない

生(いのち)を知れ

友よ

人間は此の大きな自然のなかで銘銘に苦んでゐるのだ

しづかに行け

 

[やぶちゃん注:「K.TŌYAMA.」「Ō」長音符と思われる部分の左右は、原典では下の「O」に沿って下がっているが、再現出来ないので、ここでかく注した。この人物(姓「遠山」?)は不詳。白神氏の「山村暮鳥年譜」によれば、本詩篇は大正六(一九一七)年十月刊の『感情』に初出された旨の記載がある。]

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