悲痛を論ず 山村暮鳥
悲痛を論ず
遠ければ彼方(あちら)の空、
わたしに何のかかはりもない
その空の雲の形。
私の眩しい瞳を指(さ)してくる
丘の圃(はたけ)をまつ直に
ほそい懶(ものう)いCLARIONET.
これぞ黑い吊(とむらひ)の歌、
大麥の穗並の光、
微風の樣な「無限」の暗示。
これぞ黑い吊の歌、
敷布(シイツ)の上の見つけもの、
唯、一すぢの短い毛。
[やぶちゃん注:「CLARIONET」クラリオネット。クラリネット(clarinet)に同じい。
「吊(とむらひ)」「吊」は「弔」の俗字としてよく用いられる。]