だんす 山村暮鳥
だんす
あらし
あらし
しだれやなぎに光あれ
あかんぼの
へその芽
水銀歇私的利亞(ヒステリア)
はるきたり
あしうらぞ
あらしをまろめ
愛のさもわるに
烏龍(ウウロン)茶をかなしましむるか
あらしは
天に蹴上げられ。
[やぶちゃん注:本詩篇は先の「曲線」とともに、『卓上噴水』第二集(大正四(一九一五)年四月一日発行)に発表されている。太字「さもわる」は原典では傍点「ヽ」。「水銀歇私的利亞(ヒステリア)」の「ヒステリア」のルビは「歇私的利亞」の五字に対して振られている。
「さもわる」(ロシア語:самовар/但し、原音のカタカナ音写なら「サマヴァール」/ラテン文字転写:samovar)ロシア及びその他のスラブ諸国・イラン・トルコなどで、伝統的に湯を沸かすために使用されている金属製の茶を供給する器具。ロシアのものが最も知られ、容器の中央に上下に通じた管があり、そこで木炭を燃やして周囲の水を沸かすようになっている。]