あかんぼ 山村暮鳥
あかんぼ
暴風(あらし)はさつた
あらし
あらし
あばれくるつて過ぎさつた
そしてそのあとに可愛いいあかんぼを殘して
わすれていつたのか
あかんぼはすやすやと寢床(ねどこ)の上
そのそばにぐつたりとつかれてその母もねてゐる
何といふ麗かな朝だらう
わたしは愛する
[やぶちゃん注:一行目の「暴風」のルビ「あらし」は、原典では(二本とも)二字の下方に「らし」としか印字されていない。これは「あらし」の「あ」の脱字と断じて特異的に訂した。無論、彌生書房版全詩集も加工データとして使用した「青空文庫」版(底本・昭和四一(一九六六)年講談社刊「日本現代文學全集 54 千家元麿・山村暮鳥・佐藤惣之助・福士幸次郎・堀口大學集」)も孰れも「あらし」とルビしている。]