一本のゴールデン・バツト 山村暮鳥
一本のゴールデン・バツト
一本の煙草はわたしをなぐさめる
一本のゴールデン・バツトはわたしを都會の街路につれだす
煙草は指のさきから
ほそぼそとひとすぢ靑空色のけむりを立てる
それがわたしを幸福にする
そしてわたしをあたらしく
光澤(つや)やかな日光にあててくれる
けふもけふとて火をつけた一本のゴールデン・バツトは
騷がしいいろいろのことから遠のいて
そのいろいろのことのなかにゐながら
それをはるかにながめさせる
ああ此の足の輕さよ
[やぶちゃん注:「ゴールデン・バツト」の中黒点は有意に大きいが、再現すると、読みが却って躓くように思われるので再現をやめた。]
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