鸚哥小曲 山村暮鳥
鸚哥小曲
Ⅰ 途上所見
汽車みちを
ゆく年增(としま)、
爪先の冬はさみしや。
白足袋に黃(きいろ)い泥が
ついてます。
[やぶちゃん注:老婆心乍ら、総標題「鸚哥小曲」の「鸚哥」は「いんこ」と読む。]
Ⅱ 朝
日本橋。
朝の電車のガラス戸に
うす紫の靄(もや)見れば
そぞろつめたい東京の
女の肌をおもひだす。
冬はことさら大理石(マアブル)の
上をすあしの意氣もなし。
おわいの船が通ります。
[やぶちゃん注:「おわいの舟」はママ。「おわいの船」は「汚穢」(排泄物)を搬送する舟のことであるから、歴史的仮名遣としては「をわい」である。]

