よい日の詩 山村暮鳥
よい日の詩
どこをみても木木の芽は赤らみ
すつかり赤らみ
枯葉の下から草も靑靑と
そしてしつとり濡れた木の下枝では
どこからともなく集つてきた鶸やのじこが囀つてゐる
何といふ善い日であらう
友達の花嫁のまめまめしい働きぶりをみてきた私の目のかわゆらしさよ
何がそんなにうれしいのか
お太陽樣(てんたうさま)もみてゐらつしやる通り
此の山みちで
私はすこし醉つてをります
[やぶちゃん注:太字「のじこ」は底本では傍点「ヽ」。
「鶸」スズメ目スズメ亜目スズメ小目スズメ上科アトリ科ヒワ亜科 Carduelini の鳥の総称で「ヒワ」という種は存在しない。但し、広義のこれだと、カナリア(カナリア属カナリア Serinus canaria など)やカワラヒワ(カワラヒワ属カワラヒワ Chloris sinica など)、イスカ(イスカ属イスカ Loxia curvirostra など)、ウソ(ウソ属ウソ Pyrrhula pyrrhula など)等をまで広汎に含んでしまうので、一般に狭義で「鶸」と言った場合は、ヒワ亜科カワラヒワ属マヒワ Carduelis spinus を指すと考えてよい。
「のじこ」スズメ目スズメ亜目ホオジロ科ホオジロ属ノジコ Emberiza sulphurata。漢字表記は「野路子」或いは「野地子」。参照したウィキの「ノジコ」によれば、『中華人民共和国南東部、台湾、日本、フィリピン北部』に分布はするものの、夏季に日本の『本州北部で繁殖(夏鳥)し、冬季になると中華人民共和国南東部、フィリピン北部へ南下し』越冬するが、『本州西部以南では』そのまま残って『越冬する個体も』おり、また何よりも本種は『日本のみで繁殖する』種である。全長は十三・五~十五センチメートル、翼開張は二十一センチメートル、『体上面には暗褐色、体側面には褐色』『や灰緑色の縦縞が入る』。『尾羽の色彩は黒褐色で、外側から』二『枚ずつの尾羽には白い斑紋が入る』。『中央尾羽の色彩は淡赤褐色で、羽軸に沿って黒褐色の斑紋(軸斑)が入る』。『翼の色彩は黒褐色で、羽毛の外縁(羽縁)は淡褐色。中雨覆や大雨覆の先端には白い斑紋が入り、静止時には』二『本の白い筋模様(翼帯)に見える』。『眼の上下に白い輪模様(アイリング)があ』り、『嘴の色彩は青みがかった灰色』、『後肢の色彩は淡黄褐色』を呈する。♂は『頭部や体上面は黄緑色や灰緑色の羽毛で被われ』、『下面は黄色い羽毛で被われ』ており、『眼先は黒い』。♀は『頭部や体上面が淡褐色、下面が淡黄色の羽毛で被われ、眼先は淡褐色』。同属のアオジ(ホオジロ属アオジ Emberiza spodocephala)と『非常に良く似ており、素人では見分けが困難である』。『繁殖期には標高』四〇〇~一五〇〇メートルの『開けた森林に生息する』。『食性は雑食で、昆虫、種子などを食べ』『夏季は樹上で主に昆虫を、冬季は地表で主に種子を』摂餌する。『繁殖形態は卵生。草の根元や地表から』二メートル『以下の高さにある低木の樹上に植物の茎や枯れ葉などを組み合わせたお椀状の巣を作り』、五月から七月にかけて一回に二~五個(主に四個)の『卵を産む』。『雌雄交代で抱卵し』、『抱卵期間は約』十四日で、『雛は孵化してから』七日か八日で巣立つ、とある。]