雪 其他 山村暮鳥
雪 其他
ほのかににほへ肉の花
ほのかにくるめきつ
よるのつらさを
しみじみと雪にこめ
いとほのかににほへ
*
たれもつらくはあたらねど
珈琲茶碗の冷えてゆく
ひかる蜥蜴のしつぽがきれて
ぴちぴちそれがはねたとて
なぜに心の悲しめる
*
星を梟はねむたかろ
月靑ざめたそらをみれば
水かげらふの物思ひ
さればこそ、わがのぞみよ
*
とほくはるかに
ほつれ毛はをりをり靡く
雪がちらちら
ほのかに
膨らむものがある
[やぶちゃん注:老婆心乍ら、最終連の「靡く」は「なびく」である。]