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2017/03/20

大韮露章   山村暮鳥

 

  大韮露章

 

   Ⅰ

 

ここは天上で

粉雪がふつてゐる

 

はつふゆの日は古代模樣のさみしさ

その上にふる雪

雪以上の雪の風景

陰影(かげ)がふりかへつては

直覺的にわたしの手を眺める

 

陰影はそれとなくゆれてゐる……

 

ここは天上で

粉雪が頻りにふつてゐる

 

[やぶちゃん注:総題の「大韮露章」は「だいきうろしやう(だいいきゅうろしょう)」と音読みしておく。漢代の葬送歌「薤露歌」(かいろのうた)や夏目漱石の「薤露行」(かいろこう)で知られるように、薤(にら)の葉の上の露は消え易いところから、「人の世のはかないこと」「人の死を悲しむ涙」をシンボライズした語が「薤露」である。ここは「大韮」であるから、単子葉植物綱キジカクシ目ヒガンバナ科ネギ属ラッキョウ Allium chinense の葉の上の露ということになる。]

 

   Ⅱ

 

まふゆの空は

瞳のなかに澄んでゐる

すつかり葉つぱのおちつくした

樹木は樹木のさみしさに

雪のふるのをまつてゐる

そしてわたしは

神のやうな悲哀を舐めて生きてゐる

 

   Ⅲ

 

うまれたばかりの

あかごののどぶえを

ぎゆつとしめていつたのは

なにものだ……

あをぞらの木から

さみしいものがふつてゐる……

 

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