なつのあしたを 山村暮鳥
なつのあしたを
なつのあしたを雪ぞふる
なつのあしたを
その中をかけめぐる燕ら
女の瞳はいよいよ靑くうつくしくかなしく
――なつのあしたを雪ぞふる
すぎしひのまんどりん
その音(ね)がゆめをゆする
たましひの黎明(よあけ)、はてなく引かれた直線
凝視(みつめ)られた寶石の香、肉にさく薔薇
――なつのあしたを雪ぞふる
沼におほ空あり
その空に月浮けり
されば
かぎりなきよろこびの魚となり
抱(いだ)かれて死なましものを
すぎしひのまんどりん
その音がゆめをゆする