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2017/03/15

航海の前夜第五篇 午後のほゝ笑み   山村暮鳥

 

  午後のほゝ笑み

 

黑煙を吐き、まさに運轉をはじめんとする

埠頭(ピイア)の小さな汽船よ。

 

湖上、

水標はいま零度を示し

風吹かず

波も無し。

空に漂ふ旗の白

ああ、洋酒の匂ひ……

(冬の日の重き、重き跫音を聞いておる)

 

待合茶屋の二階の窓より

見よ。――

頸の白い、女等、

男もまじる赤き午後の微笑……。

 

[やぶちゃん注:「航海の前夜」五篇の最後の第五篇。

「埠頭(ピイア)」pier(英語)。埠頭(ふとう)・桟橋・橋脚の意。

「水標」「すいへう(すいひょう)」で量水標のこと。河川や港湾の岸にあって水位を測る指標装置。垂直に立てた支柱に目盛りが振られており、これを目視で読み取る。零(ゼロ)点基準には、通常、「東京湾中等潮位」(Tokyo Peil:「T.P.」と略称)が用いられる。「Peil」(ペール)は、英語ではなく、「水位」「基準面」を意味するオランダ語で、参照したウィキの「量水標」によれば、『これは明治初期の河川・港湾などの基準面の観測と設置を行ったのが、いわゆる「お雇い外国人」であったオランダ人技術者だったことに由来する』とある。

「跫音」二字で「あしおと」。]

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