十字架 山村暮鳥
十字架
十字架のおもさは齒をたて
むごたらしくも肉體に喰入る
苦しむものの愛する十字架
苦しむものよ
にんげんこそまことのキリスト
そして道はながい
ゴルゴダへの此の道
どこまで行つたらつきるのか
肩の上の十字架
よろめく足を踏みしめて進み行く
くるしみをじつと耐へてすすみ行く
みそなはせ
主よ、人間のこの強さを‥‥
[やぶちゃん注:最後のリーダはご覧の通り、四点で全体は原典では間隔が広く、活字三字分に当たっている。
「みそなはす」古語「見そなはす」(他動詞サ行四段活用)の命令形。「見行(みそな)はす」「みそなふ」と同じく「見る」の尊敬語。元来は尊敬の意の動詞「見す」の連用形「見し」の「行なふ」に尊敬の助動詞「す」を添えた「行(そこな)なはす」が附いて変化した語。御覧になられませ。]

