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2017/03/18

記憶   山村暮鳥

 

  記憶

 

   1

 

ひとり、ただ獨り

眞晝(まひる)、

疲れて野の小徑(こみち)をあゆむ時。

 

馬鈴薯(じやがいも)の花、

大麥の穗並のひかりに搖れ、血の如き無花果(いちじく)を落して夏は微白(ほのじろ)き影の記憶を悲しみつ、凡て穩(おだや)かである。

 

物の中心はしばし移らず、

彼方の空より、痛ましい愉樂は最後の接吻(キス)をあたへ

而して別離を告げたれど

わが、雲雀の如き眸をもち、星の如き靈魂の處女(をとめ)らよ!

此のこころの罅(ひび)に水銀の顫(ふる)へて弛みゆく

CLARIONET の其の斷續(だんぞく)……

 

 

 

   2

 

白金色(プラチナ)の月は正午(まひる)の瀦水(ちよすい)に浮んだ。

あたらしい愁ひの「綠」!

安息は、その白金色(ブナチナ)の月光の影の如く、眼瞼(まぶた)の邊(ほとり)に光る。

刈られたれど、いまだ靑き草の林(ベツト)に橫はれば

希望(のぞみ)は處女(をとめ)の胸にもたれ、

その額(ひたひ)をうづめて夏の踏舞はうめく。

 

我は、ふと大空を仰いだ。

大空と我と

その間に消えた、その水鳥。

 

[やぶちゃん注:「瀦水(ちよすい)」貯水池。

「林(ベツト)」「ベツト」は「林」へのルビで、「ベツト」の表記はママ。ベッドの意。

「橫はれば」「よこたはれば」。

「踏舞」ママ。「たうぶ」と読んでおく。]

 

 

 

   3

 

(君も、かくして輕睡(まどろ)み給ふか)

眼瞼(まぶた)を閉づればこちたさに午後の牡丹はためいきす。

太陽の嫉妬は玻璃(ガラス)の碎片(かけら)の如く、

柔かな肉の腐爛(ふらん)のDECADANCE.

(君も、かくして輕睡み給ふか)

やがてしづかな覺醒は

水盤に金魚のうかぶ心好さ!

 

ああ、沈默のふくらむ時、

牡丹の花をのぞき傾く此の靈魂(たましひ)。

 

[やぶちゃん注:「こちたさ」自らの花の豊満さにうんざりしている状態を指していよう。]

 

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