燐素 山村暮鳥
[やぶちゃん注:次の詩篇「燐素」は八十一頁と八十二頁見開きであるが、そこの例の投げ込み紙片が、
二行目
「瞳に削げ」は「瞳を削げ」のあやまり
とある。太字は投げ込みでは傍点「○」である。山村暮鳥の誠意を受け、以下の本文では「に」を「を」と特異的に訂した。]
燐素
指を切る
飛行機
麥の芽靑み
さみしさに
さみしさに
瞳(め)を削げ
空にぷらちなの脚
胴體紫紺
冬は臍にこもり
ひるひなか
ひとすぢのけむりを立て。
[やぶちゃん注:本篇は大正四(一九一五)年三月一日発行の『地上巡禮』に、先の「發作」とともに発表されている。太字「ぷらちな」は底本では傍点「ヽ」
「燐素」元素記号「P」の窒素族元素の一つであるリン。原子番号15。]