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2017/03/16

洋館の靑き窓第二篇 時雨   山村暮鳥

 

  時雨

 

疲れ喘ぎ、怖ろしき野獸の馳り去るのを見てあり

また、一日を思ひ暮す、

 

灰色の冬の溫み――

死の床(ベツト)

 

草の綠りにふくらむ胸の歡び、

高原を瞼にかくした三階の夢の赤き烙印、

Sといふ

うつくしい花

蜜の匂ひの……。

「必と癒つて、ね。」

「ええ。」

 

ああ、冷たく微笑む如な時雨よ、

我が靑い記憶に殘り

悲しき夕の窓をば打つてくれるな

 

[やぶちゃん注:「洋館の靑き窓」六編の第二篇。「ベツト」はルビのママ。

「馳り去る」「はしりさる」と読みたい。

「瞼」「まぶた」。

「S」不詳。先行する航海の前夜第一篇 病めるSにと私の注を参照されたい。

「必と癒つて、ね」「きつとなほつて、ね」。なお、山村暮鳥もまた、後に、満四十歳で、結核で亡くなっている。

「如な」あまり見かけない用字であるが、「やうな」(樣な)と訓じているのであろう。以下の第五篇「柳のほとり」にも出る。]

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