地上一心信經 山村暮鳥
地上一心信經
ふらすこの中にあり
星の月にあり
梢にあり
よろこびの雪にあり
病める魚の眼にあり
影にあり
耳にあり
罪の赦しにあり
水晶にあり
夢にあり
信念にあり
白銀の雨にあり
愛にあり
嫉妬にあり
觸角の上にあり
野にあり
苦惱にあり
匂ひにあり
樹木にあり
にくしみにあり
床にあり
ともしびにあり
酒にあり
過去にあり
未來にあり
祈禱にあり
發音にあり
謹愼にあり
光にあり
外にあり
内にあり
刹那にあり
花にあり
空にあり
水にあり
黎明にあり
炎天にあり
夕にあり
肉にあり
太陽にあり
みどりにあり
音響にあり
痛みにあり
草にあり
力にあり
眠れるあらしにあり
智慧にあり
本能にあり
聖靈にあり
沈默にあり
死よ、美よ
その餘はすべて汝の糧なり
[やぶちゃん注:「信經」「しんぎやう(しんぎょう)」は前に「À
FUTUR」で注した「信仰個條(クリイド)」と同じであるが、ここはその原初的な本来の「キリスト教会で信仰を明白に表現すること」という意味で用いているように私には感ぜられる。]