夜店 山村暮鳥
夜店
此處ばかりが街のやうな夜店の前、
なめらかな赤い灯。
夜。
此の混雜に吸ひよせられて動き
かゞやく。
夜店の前をたゞよう群よ!
月光はひとり心理の外にさびしく、
たゞ靑白く……
黑き、低き家並、
さらに低き街、
此處にしめやかな音樂は光り、
また、一夜の華壇のほとり、
街に匂ふ
露と、
影像(かげらふ)と。
夜。此の中心をなす夜店の花と、
その周圍をうつくしくかざる灯。
[やぶちゃん注:「影像(かげらふ)」珍しい読みである。しかし、ちらつく姿・シルエット、はっとする幻像の謂いとして、実に、いいルビである。]

