低唱 山村暮鳥
低唱
美しい物が碎ける……
かなかなの
音(ね)のなかの
波羅韋增雲(ぱらいそう)、
ああ、かの靑空。
[やぶちゃん注:「波羅韋增雲(ぱらいそ)」言わずもがな、「ぱらいそ」は「パライソ」(Paraíso)でポルトガル語の「天国(永遠の楽園)」を意味する切支丹用語で英語の“paradise”である。この漢字当ては上田敏の「海潮音」のフランスの南フランス、プロヴァンス地方の詩人で、古いプロヴァンス語を再興させようとした「テオドル・オオバネル」(テオドール・オバネル Théodore Aubanel 一八二九年~一八八六年)の訳詩「故國」に於いて、
小鳥でさへも巣は戀し、
まして靑空、わが國よ、
うまれの里の波羅韋增雲。
と現われたものの流用であろう。上田敏はそこで『「故國」の譯に波羅葦増雲(パライソウ)とあるは、文祿慶長年間葡萄牙語より轉じて一時、わが日本語化したる基督教法に所謂天國の意なり。』と訳者注を附している。]

