歡樂の詩 山村暮鳥
歡樂の詩
ひまはりはぐるぐるめぐる
火のやうにぐるぐるめぐる
自分の目も一しよになつてぐるぐるめぐる
自分の目がぐるぐるめぐれば
いよいよはげしく
ひまはりはぐるぐるめぐる
ひまはりがぐるぐるめぐれば
自分の目はまつたく暈み
此の全世界がぐるぐるとめぐりはじめる
ああ!
[やぶちゃん注:「自分の目はまつたく暈み」の「暈」の字は実は原典では「葷」となっている。しかし、この「葷」(音「クン」)は禅寺の戒壇石にしばしば見かける「不許葷酒山門」(葷酒(くんしゆ)山門に入るを許さず)の「葷」で、「大蒜(にんいく)・韮(にら)・葱などの匂いの強い辛い菜」或いは「腥(なまぐさ)いもの・肉食」が主意であり、ここでの訓と思われる「くらむ」という意味は、ない。これは山村暮鳥自身の誤記或いは植字ミスの校正洩れと考えられるので、特異的に本文を訂した。無論、彌生書房版全詩集も加工データとして使用した「青空文庫」版(底本・昭和四一(一九六六)年講談社刊「日本現代文學全集 54 千家元麿・山村暮鳥・佐藤惣之助・福士幸次郎・堀口大學集」)も孰れも「自分の目はまつたく暈み」となっている。]