都會の詩 山村暮鳥
都會の詩
けむりの渦卷く
薄暮の都會
ぽつと花のやうに點じ
蔓のやうな燈線のいたるところで
黃金色に匂ふ燭光のうつくしさよ
黃金色に匂ふ千萬の燭光
みろ
都會はまるで晝のやうだ
だいあもんどがなんだ
るびいがなんだ
此の壯麗な都會の街街家家
ここに棲む人間なればこそどんな苦みをも耐へるのだ
ここにすむ人間の幸福
ああ何もいらない
此の壯麗に匹敵するものは何か
此の幸福の上にあつて
都會は生きてゐる
よるのふけるにしたがつて
よるがふければふけるほど
だんだん都會は美しく光りかがやき
ここで疲れた人間が神神のやうに嚴かな眼瞼(まぶた)を靜にとぢるのだ
此のうつくしさは生きてゐる
[やぶちゃん注:太字は原典では傍点「ヽ」。]

