朝 山村暮鳥
朝
雨戸をがらり引きあけると
どつとそこへ躍りこんだのは日光だ
お! まぶしい
頭蓋(あたま)をがんと一つくらしつけられでもしたやうに
それでわたしの目はくらみ
わたしはそこに直立した
おお
けれど私のきつぱりした朝の目覺めを
どんなに外でまつてゐたのか
此の激烈な日光は!
やがておづおづと痛い目をほそく漸くみひらいて
わたしはみた
わたしはみた
そこに
すばらしい大きな日を
からりとはれた
すべてがちからにみちみちた
あたらしい一日のはじめを
[やぶちゃん注:「頭蓋(あたま)をがんと一つくらしつけられでもしたやうに」これは「頭蓋(あたま)を/がんと/一つ/くらしつけられでも/したやうに」である。「くらしつける」というのは「ひどく打つ」「なぐりつける」という意味の方言であるが、中部から東北地方にかけて広く見られるものである。「日本国語大辞典」でも新潟県(内地と佐渡)・福島県・山形県・富山・長野・岐阜を挙げており、山村暮鳥が布教で回った山形が含まれ、ネット検索では同じく巡回布教した秋田の方言としても同義で存在する。]