蝶と晝の神經 山村暮鳥
蝶と晝の神經
洋傘(パラソル)の女が二人、
その影と、柔かい光りの中を動いて行く。
此の時、空の群集より、
花辨のやうな蝶、
菜の花圃(はなばた)へ眠りにゆく時、
晝の神經が光り、
次第に光る、
ちやうど玻璃の窓のやうに。
丘より匂ふ白色と、
暗い心に……
夢に……
眼瞼に……
(――蝶と女と窓との音樂。――)
神經の匂ひつかれた晝の外部、
路側の花のかゞやき。
[やぶちゃん注:「玻璃」ルビはないが、四篇後の「線條」から「がらす」と読んでおく。
「路側」「みちばた」と訓じていよう。こう読む例は例えば、芥川龍之介の「トロツコ」(大正一一(一九二二)年三月『大観』初出)にある(リンク先は私の古い電子テクスト)。]

