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2017/03/22

十字街の詩   山村暮鳥

 

  十字街の詩
 
    
 „THIS IS THE MANY-TENTACLED TOWN”

            ――VERHAEREN――

 

ここは都會の大十字街

すべての道路はここにあつまり

すべての道路はここからはじまる

堂堂とその一角にそびえた

大銀行をみろ

その窓したをぞろぞろと

ひとはゆき

ひとはかへる

なんにもしらないゐなかびとすら

此の大銀行の正面にてはあたまを垂れ

手をうやうやしくあはせる

ああ都會の心臟である十字街

都會はまるで惡食(あくじき)をする大魚の胃ぶくろのやうに

ここはひとびとをひきつけて

そのひとびとを喰ひ殺すところだ

そこから四方へ草の蔓のやうにのびてゆく街街

つらなり列ぶ家家

何といふ立派なものだ

ああ此のけむり吐く大煙筒の林

此のすばらしさに帽子をとれ

へとへとにつかれながら而も壯麗に生きてゐる大都市

此の中央大十字街

その感覺はくもの巣のやうな大路小路にひろがり

ひろいひろい郊外に露出して顫え

其處で何でもかでも鋭敏に感じてゐる神經

どんなものでもひつ摑まうとしてゐる神經

その尖端のおそろしさよ

 

[やぶちゃん注:「顫え」はママ。

「„THIS IS THE MANY_TENTACLED TOWN」「――VERHAEREN――」これは、ベルギーの詩人で劇作家でフランス詩壇で活躍し、ヴェルレーヌやランボーらとともに象徴派の一翼を担ったエミール・ヴェルハーレン(Emile Verhaeren 一八五五年~一九一六年)が、一八九五年に刊行した詩集“Les Villes tentaculaires”(フランス語・「触手ある都市」)の題名を英訳意訳したものかと思われる。

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