明石町のシヅヱ樣に 山村暮鳥
光
明石町のシヅヱ樣に
わが美しき感覺は
色白き鵝鳥のごとく、
三味線の糸の如く、
さみしさに、噫(ああ)、SOLO-SERENATA.
季節は影なれ、しかすがに
わが庭園のすたれゆく夜の惱みよ、
わが噴水は
かなしき夢に甦(よみがえ)る。
かがやく過去に「死」を忘れたる推移ゆえ、
女よ、われは行方(ゆくえ)を知らず。
[やぶちゃん注:ルビ「甦(よみがえ)る」「行方(ゆくえ)」及び「推移ゆえ」の「ゆえ」は総てママ。標題の「明石町」も「シヅヱ」なる女性も不詳。
「SOLO-SERENATA.」「ソーロ・セレナータ」。イタリア語。夕べに恋人の窓下で歌い奏でられる独奏曲。]

