譚海 卷之二 志摩國風俗の事
志摩國風俗の事
○志摩國の俗に、其人死すれば、第七々日(だいなななぬか)に至り、山伏を招じ法事の法事をなし、座敷に土を築(きづき)て山形を造り、松杉どの枝を折(をり)て山へ挿みおきて、呪誦勤行(じゆじゆごんぎやう)終れば、一家の男女(なんによ)集りて、その松杉の枝をぬきとり、六道所生(ろくだうしよせい)の驗(しるし)となし、生天畜生(しやうてんちくしやう)などの果(くわ)をうらなふ事なり。其後絶(たえ)て年忌佛事等を修(しゆ)する事なしとぞ。
[やぶちゃん注:「第七々日」四十九日。
「六道所生の驗」六道に生まれ変わることのシンボル。
「生天畜生などの果」六道の三善道たる「修羅・人間(じんかん)・天上」界に仏果によって生まれ変わったか、或いは三悪道たる「畜生・餓鬼・地獄」界に応報によって堕したかを占うという意味であろう。]