日あたりに……… 山村暮鳥
日あたりに………
日あたりにひきずりだした蒲團は
それこそぼろで、板のやうであつたが
すぐぷくぷくと
生きかへつたやうにふくれあがつた
ああ、天氣は有難い
こんなによく晴れては
どんなに今夜は凍(こほ)るだらう
だがこの布團(ふとん)のなかでぬくぬくと土龍(もぐら)のやうに
子どもらをまんなかに
妻も自分もかぢりついて寢るんだ
これもまた
冬の一つのよろこびである
自分達貧乏人でなくては、とても
うけられない天の祝福である
[やぶちゃん注:標題下のリーダは彌生書房版全詩集版では六点。]