冬 山村暮鳥
冬
冬のよふけは
凄いほど靜穩(しづか)だ
なにかが
みんな凍(し)みついてしまつたようだ
本をよんでゐると
遠くの方がひとところ
馬鹿ににぎやかになりだした
なんだらう
いまごろ
緣側にでてみると
あんまりしづかなよふけなので
そこだけがぽつちりと明るく
まるで大きな牡丹でもさいてるやうにおもはれる
喧嘩ぢやありませんかと妻
無理はないよ
なんといつてもこの寒氣だもの
[やぶちゃん注:「みんな凍(し)みついてしまつたようだ」の「ようだ」はママ。
最終行「寒氣」は彌生書房版全詩集版では「寒さ」である。
彌生書房版全詩集版。
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冬
冬のよふけは
凄いほど靜穩(しづか)だ
なにかが
みんな凍(し)みついてしまつたやうだ
本をよんでゐると
遠くの方がひとところ
馬鹿ににぎやかになりだした
なんだらう
いまごろ
緣側にでてみると
あんまりしづかなよふけなので
そこだけがぽつちりと明るく
まるで大きな牡丹でもさいてるやうにおもはれる
喧嘩ぢやありませんかと妻
無理はないよ
なんといつてもこの寒さだもの
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