改版「風は草木にささやいた」異同検証 「Ⅳ」パート
Ⅳ
[やぶちゃん注:「人間の午後」は「憂鬱」の「鬱」が「欝」となっている。]
[やぶちゃん注:「雨の詩」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「荷車の詩」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「歡樂の詩」は初版の奇体な「自分の目はまつたく葷み」が、「自分の目はまつたく暈み」と「暈」の字で正しく記されてある。]
[やぶちゃん注:「海の詩」は初版の衍字としか思われない「この憂鬱な波のうねりりは」が正しく「うねりは」となっている。但し、「憂鬱」の「鬱」は「欝」に変わっている。]
[やぶちゃん注:「ザボンの詩」は初版の四行目「あひよりそうてゐるそのむつまじさ」が「あひよりそふてゐるそのむつまじさ」となっている。]
[やぶちゃん注:「此處で人間は大きくなるのだ」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「郊外にて」は初版詩篇中の三箇所(一箇所はもともと「麥穗」)の「麥ぼ」が「麥穗」に総て書き変えられてある。]
[やぶちゃん注:「波だてる麥畑の詩」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「刈りとられる麥麥の詩」は四行目「麥畑はすつかりいろづき」の「麥畑」が「麥畠」となっている。]
[やぶちゃん注:「都會にての詩」は異同なし。]
[やぶちゃん注:「大鉞」は異同なし。]
一本のゴールデン・バツト
一本の煙草はわたしをなぐさめる
一本のゴールデン・バツトはわたしを都會の街路につれだす
煙草は指のさきから
ほそぼそとひとすぢ靑空色のけむりを立てる
それがわたしを幸福にする
そしてわたしをうれしく
光澤(つや)やかな日光にあててくれる
けふもけふとて火をつけた一本のゴールデン・バツトは
騷がしいいろいろのことから遠のいて
そのいろいろのことのなかにゐながら
それをはるかにながめさせる
ああ此の足の輕さよ
[やぶちゃん注:初版の「一本のゴールデン・バツト」では六行目が「そしてわたしをあたらしく」となっている。この改版のそれは黙読しても朗読してみても、「そしてわたしをうれしく」「光澤(つや)やかな日光にあててくれる」とあるのは、表現上、どうみてもおかしい。確信犯の改作とすれば、甚だしい改悪と言わざるを得ない。]
[やぶちゃん注:初版ではここには詩篇「記憶について」が挟まっているが、改版ではカットされている。]
[やぶちゃん注:「收穫の時」は異同なし。]
[やぶちゃん注:ここ(「Ⅳ」のコーダ)に初版では詩篇「くだもの」が配されてあるが、改版ではカットされている。]
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