冬の着物 山村暮鳥
冬の着物
日一日と
二百十日の近づくやうな
ある氣味惡さ
だがその厄日が
すぎさると、すぐ
黃金色した穀物のとりいれ……
そんな氣持だ
自分はその中にあつて
自分達の米や味噌となる
おとぎばなしの原稿をかき
妻は妻で
そのお腹の子のために
やがてうまれるその子のために
冬の着物をぬつてゐる
ふくふくとした
温かさうな
赤い、小さい………
[やぶちゃん注:彌生書房版全詩集版では六行目「黃金色した穀物のとりいれ」が「黃金色した穀物のとりいれ……」となっている。原稿に当ったということだろうか? 底本を拡大してみたが、一見、点の痕跡のように見えるものはあるにはあるが、それはとても六点リーダではなく、やはり単なる汚れとしか私には見えない。ところが逆に、彌生書房版全詩集版では末行の「赤い、小さい………」の九点リーダが存在せず、「赤い、小さい」で截ち切られている。]

