譚海 卷之二 武州玉川菊紋石の事
武州玉川菊紋石の事
○武州玉川の邊(あたり)、むら山と云(いふ)あたりより菊紋石をいだす。黑石にして菊花の白き文あり、甚(はなはだ)鮮(あざやか)なり、至(いたつ)てよき石には枝葉迄具(ぐ)し、宛然(ゑんぜん)たる花形を備(そなへ)たるあり。片々(へんぺん)うちくだきても皆然り、玉川水中に産する所の石也。
[やぶちゃん注:「武州玉川」現在の山梨県・東京都・神奈川県を流れる多摩川。
「菊紋石」凝灰岩の中の割れ目に結晶化した方解石が菊の花のように入って紋理を形成したもので、愛石家に珍重される。
「むら山」恐らくは中世の村山党の本拠地で、現在の東京都と埼玉県に跨る狭山丘陵付近の「村山郷」という旧称を多摩川河岸まで拡張した謂いであろう。青梅は菊花石(きっかせき)の産地として知られるから、現在の青梅市から羽村市附近か。
「宛然」まさにそっくりそのままであること。]