雲(二篇) 山村暮鳥
雲
丘の上で
としよりと
こどもと
うつとりと雲を
ながめてゐる
おなじく
おうい雲よ
いういうと
馬鹿にのんきそうぢやないか
どこまでゆくんだ
ずつと磐城平(いはきたひら)の方までゆくんか
[やぶちゃん注:「のんきそう」はママ。
「磐城平(いはきたひら)」「岩城平」とも書く。「たいら」は清音で濁らないのが普通。陸奥国磐前郡(現在の福島県浜通り)の城下町。夏井川の流域の沖積地に建設され、発展した。慶長七(一六〇二)年、鳥居忠政が岩城氏除封後、十万石で入封し,翌年、赤目物見岡の飯野八幡宮跡地に築城し、城下町を建設したのに始まる。当初は、城周辺に侍屋敷・中間屋敷と足軽屋敷・寺町・職人・商人町が設けられ、商人町は一町目から三町目まで町割りされた。城郭の完成に十二年を要したが、この時期に各地から商人が集まり、磐城平藩内の物資の集散地として経済の中心地に成長した(以上は平凡社「世界大百科事典」に拠った。正直言うと、私は小学生の時、この詩に出逢った時には、「磐城平」というのは何処かの高原で、人っ子一人いない場所だろうと誤認イメージしていたことを告白しておきたい。]