雪景 山村暮鳥
雪景
しとしとと
雪のふるなか
そのなかをかけめぐり
かけめぐる子どもら
林檎のような赤い頰つぺたの健康さ
くちぐちにうちだす小銃の音
雪つぶての砲彈
とん、とん、ととん
おひかけるもの
逃げまどふもの
とんとん、とんとん、とん
泣く弱蟲にはめもくれるな
眞劔な子どもら
ホオマーのイリアツドからでも
おどりだしてきたような勇者
英雄ぞろひ
しとしとと雪のふるなか
雪だらけ
まるで繪にみる
子どもらの戰爭ごつこ
[やぶちゃん注:「おどりだしてきたような勇者」はママ。
「健康さ」先例に徴するなら「たつしや(たっしゃ)さ」と訓じている可能性が高く、その当て読みの方がよい。
「ホオマーのイリアツド」紀元前八世紀末のアオイドス(吟遊詩人)であったとされるホメロス(ラテン語:Homerus/英語:Homer)の書いたと伝えられる最古期の古代ギリシアの長編叙事詩「イーリアス」(ラテン語:Ilias/英語:Iliad)。
彌生書房版全詩集版。拗音表記はそのまま採用した。
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雪景
しとしとと
雪のふるなか
そのなかをかけめぐり
かけめぐる子どもら
林檎のような赤い頰つぺたの健康さ
くちぐちにうちだす小銃の音
雪つぶての砲彈
とん、とん、ととん
おひかけるもの
逃げまどうもの
とんとん、とんとん、とん
泣く弱蟲にはめもくれるな
眞劒な子どもら
ホオマーのイリアッドからでも
おどりだしてきたやうな勇者
英雄ぞろひ
しとしとと雪のふるなか
雪だらけ
まるで繪にみる
子どもらの戰爭ごつこ
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「逃げまどうもの」はママ。不審。]